「ヘヴィメタルを聴いてるとモテない」
「ヘヴィメタルはモテないヤツの聴く音楽」
こういう話がヘヴィメタルの世界ではよく出てくる。
それは実際のところどうなのか?あーだこーだ言われ続けてるが結局のところ何が正しいのか?
僕はヘヴィメタルのファンを長年やっていながらこの手の話に関しては一度も言及したことが無かったが、ここらでいっぺん物申したい。僕はこのモテるか否か論争に対して根本的なことからおかしいと思っていることがある。

まずは本当にヘヴィメタルを聴いてる人はモテないのかという話について。

まあ確かにヘヴィメタルは基本的にモテなかったりとか暗く生きる人向けの音楽だと僕も思う。一般的に流行する音楽とは真逆のコアでマニアックなジャンルだし、オタク心をくすぐるようなテクニカルなプレイをよくやるし、反骨精神溢れる激しく重い音楽を奏でる。そんな音楽をスクールカースト上位出身のウェイウェイしてる陽キャといったモテやすい人間がお気に召すなんてことはそうそう無いだろう。
人生において何かしらネガティブなことがある人こそヘヴィメタルを聴くのに向いている。そんな人の心のよりどころになれたりするのだから。

で、実際のところヘヴィメタルのライブに行くとそんなモテなさそうに見える人は多くいる。
が、その一方でカップル客もたくさん目にしてきた。LOUD PARKとか行ってた人ならわかるだろうがあの手のライブは思いのほかカップルが結構いたりする。
そしてヘヴィメタル好きの“モテる”著名人も数多くいるし(谷原章介、つるの剛士、生田斗真、長瀬智也などなど)、そもそもヘヴィメタルのバンドをやってる人は大概結婚してる。
「メタルを聴いてるからモテない」に対してよく言われる否定の意見として「そいつがモテないだけ。聴いてる音楽とか趣味嗜好は関係ない。」ってのがあるが僕自身もそういうことだと思ってる。だってそれが実証済みなのだから。


しかし僕はそんなモテるか否かということは割とどうでも良くて、それよりもこの手の話に対して僕はもっと根本的なことからガツンと言ってやりたいことがある。それを聞いて欲しい。


◆モテるのが良いことという固定観念が既におかしい

ヘヴィメタルに限らず、モテるモテないの話題になると、人々はモテるのが良いことでモテないのが悪いこと前提で話を進めてるが僕はそれが既におかしいよとツッコミたい。
いつからモテる=良いことだと錯覚していた?モテたらモテたで大変ですよ?と。

モテると色々と良い思いができるのは確かだが、その分だけ厄介ごとがついてくる。モテるモテない論争をする人はそういったことがまず頭から抜けている。

まずよくニュースで話題になってる著名人の不倫騒動なんか振り返ってみてほしい。
不倫というのはモテるからこそ起こること。モテると人が何人も寄ってくる。そして寄ってきた人の数だけ人間関係のいざこざが起こる。モテて男女が交際関係になってそれはそれで良い思いをするだろうがその分だけ相応のツケを払うことになる。不倫騒動を起こした人は世間から大バッシングを受け、今まで通りに仕事が出来なくなったりする。

じゃあ不倫をしなければ良い、不倫をするのが悪いという話になるだろうが、不倫をしなかったしなかったでまた別の厄介ごとが生まれる。
不倫をした人が仮に不倫をしない一途な人間だったとしてもその場合はその人に選ばれなかった異性の者が嫉妬して何かしら嫌がらせをしに来る。その夫妻宅や彼らの職場とかに嫌がらせの電話やメールを送ったりすることとかが考えられる。嫉妬心が生む負のエネルギーというのは凄まじいもので人を意図も簡単にゲスい行為ができる生き物に変えてしまう。


アイドルなんかも見てみてほしい。アイドルというのは恋愛感情でビジネスをする、モテることのプロなわけだが、これが危険極まりない。
応援するファンの中には“過激派”、“厄介オタク”がいたりする。常日頃から行儀が悪いし、一度何かしら気に入らないことがあってキレだすと平気で犯罪行為に乗り出す。常にそんな危険人物につけ狙われているわけでアイドルはストーカーや脅迫などといった被害が非常に多い。僕はアイドルは世界一華やかであるのと同時に世界一危険な職種だと見ている。

又、アイドルはモテていながら自由に恋愛ができない。ファンは基本的にアイドルは恋人がいないことを求めているわけで恋人がいたら悪いこと扱いでスキャンダルになる。
スキャンダルが起きれば売り上げにも影響する。所属事務所など繋がっている人々にも影響が及ぶ。スキャンダル次第では最悪、解雇、違約金発生なんてことにもなりうる。モテることを極めて華やかでいる分、そんな重い責任を負わされているわけである。

人が多く集まるところは必ずトラブルがつく。学校なんかで大勢とつるんでウェイウェイしてるスクールカースト上位のモテる人達なんかはパッと見幸せそうな人生勝ち組のイメージではあるが、実際は好きな子を巡って裏でギスギスした喧嘩をしてたりする。
モテて家庭を持つことになった人なんかはママ友付き合いとかでドロドロしたいじめや醜いマウント合戦を繰り広げるなんてことも多い。

モテたらそれと引き換えに面倒な人間関係のトラブルと戦うことを強いられるわけである。そんな人を羨ましいと思えるのか?


◆勝者は恩恵と責務を2つセットで与えられる

生物学的に見てもモテることは勝ち組でモテないのは負け組ということになる。モテて交配相手を獲得して自分の子孫を繁栄するというのが動物としては勝者である。

が、勝者になったからといってそれが幸せと決まってるわけではない。勝者は恩恵を得られるがその代わりとして責務を与えられる。
結婚する→交配する→自分の子供ができる。それは恩恵と言えることだが、その子供を育てる責務を負うわけでそれがまた大変。生き物を一体育て上げるのにどれだけの身を削ることか、子供でもペットでも世話をしたことがある人ならわかるはず。我が子はかわいいものだし自分の子を育てる喜びはあるが、同時にしんどい思いをすることになる。
その家庭を持つ過酷さに耐えられず精神が崩壊、家庭内暴力なんかやったりして家庭が崩壊、そして離婚する夫婦が数多くいる。最悪の場合は死人も出る。モテることの責務を果たせない人間の末路だ。
僕の言う「モテるのが良いことという固定観念がおかしい」「モテたらモテたで大変」というのはそういうことである。

モテるモテない論争をしている人や自分がモテないことに嘆いてる人というのはモテることの恩恵の方しか見ず、責務や代償の方を見ていない。そんな人間がいざモテたら「モテない方が幸せだった」なんて言うんじゃないだろうか。
モテることで生じる代償、責任というのをまず理解した上でものを言いなさいと思う。
自分はルックスに恵まれてない、モテない、人生ハードモード、そんなことを嘆く人がよくいるがそれはとんだ筋違いな発言である。ルックスに恵まれてモテたところでまた別の問題ごとが降りかかる。人生イージーモードの人間なんて存在しない。全ての人間が人生ベリーハードモードだ。人によって降りかかる恩恵とそのツケの形が異なってるだけ。


話をヘヴィメタルに戻そう。
始めに僕は「ヘヴィメタルを聴いてるからモテないのではなくそいつがモテないだけ」というのが正しいと主張したが、百歩譲ってヘヴィメタルを聴いてるからモテない論が正しいとしても、それだったら「自分はヘヴィメタルを聴いてるからモテない」とネガティブに捉えるのではなく「自分はモテないことと引き換えにヘヴィメタルという素晴らしいものを手に入れたのだ!!」とポジティブに捉えたらいいんじゃないかと思う。
何も夢中になれるものがない、趣味が無く生きる気力が持てないという人は思いのほか多い。そんな中でヘヴィメタルでもなんでも夢中になれるものがあるってだけであなたは恵まれてると言えるんじゃないだろうか? 
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そして何よりモテないというのは裏を返せば面倒な人間関係のトラブルと戦わなくていいということである。僕は個人的にはこの利点は物凄~~~~~くデカいことだと思ってる。
ヘヴィメタルを好むということは基本的には陰キャでオタク気質の人であるはずだし、そういうタイプの人間は一人でいることが快適なはず。そういう人がモテモテの陽キャの様に人付き合いの多いライフスタイルを送ったらストレスが溜まるばかりでメンタルがやられてしまうんじゃないか。

僕はヘヴィメタル好きのモテない人に対して「そんな自分を誇りに思え!」と言いたい。モテる人生というのはあなたが思うほど良いものではない。



ヘヴィメタル (字幕版)
ハロルド・ライミス
2013-11-26


目撃証言 ヘヴィ・メタルの肖像
伊藤政則
学研プラス
2013-07-10