X JAPANでもソロでも大いに活躍した日本が誇るロックスターhide。この方の誕生日が来たというところで彼を軸としたコラムを書く。
hideという人の凄いところや魅力というのは挙げだしたらキリが無いほどあるわけだが、ここでは彼の“未来を見据えたかのような行動”について注目したい。

僕がここで話題に挙げたいのはhideは1990年代からインターネットを利用していたというところ。まだネット社会が築かれる遥か昔、世の中がネット社会化するだなんて誰も思ってないような時代にネットを駆使するとは、10年も20年も先を見据えたかのような行動だ。
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1998年に急逝した彼だが、生きていれば2000年代には2010年代、2010年代には2020年代を見据えたかのような活動をしていたと思われる。


◆先を見据えなかった日本のヘヴィメタル界

後先のことを考えずに失敗を招いた事例というのがどの分野にも多々ある。その悪い例を教訓として挙げていこう。
このサイトの主題としているヘヴィメタル系の音楽だが、この日本におけるメタルのシーンがもろに未来を見据えて行動しなかったがためにとても厳しい状況に置かれている。
その結果を物語ってるのがなんと言っても2018年のLOUD PARKの消失。これまで僕も何度もこの件に関して記事を書いたりしてるが、まさに人々が後先のことを考えずにいたが故に招いた結果である。


◆ラウド・ミュージック同士の対立は2010年代の時点で時代遅れだった

うるさいロック、ラウド・ミュージックというのはヘヴィメタル、ニューメタル、パンクロックなどと色々型分けされてある。1970年代~1990年代にラウドな音楽を聴いて青春を送ってきた世代なんかは何かとメタルVSパンク、メタルVSグランジなどとラウドな音楽同士で対立したりしていた。

ところが2000年代ともなるとそんなうるさいロック同士が手を組み出す。DOWNLOAD FESTIVALやSOUNDWAVE FESTIVALなどメタルもパンクもみんなゴチャ混ぜのラウドミュージック全般フェスというのが活気づき、2010年代にはそのスタイルのフェスが定着する。

ところが日本ときたら2010年代になってもそうはならなかった。2011年のLOUD PARKにLIMP BIZKIT、2013年にはSTONE TEMPLE PILOTSがヘッドライナーとして出演したがこれが日本人には受け入れられず集客に大失敗した。
当時の日本人メタルヘッズは「LOUD PARKにニューメタルやグランジは場違い」という認識をしていたが、他のどの国でも2010年代の時点でこの手のイベントはニューメタルだろうがグランジだろうがみんな混合でやるのがデフォルトになっていたわけであって、LIMP BIZKITやSTONE TEMPLE PILOTSといったバンドが出演して失敗する方が環境的におかしかった。

こういう世界中のアーティストを呼ぶイベントをやっていこうものなら世界の流れについていく必要がある。いつまでもメタルVSその他のうるさいロックで喧嘩をしている時代遅れな感覚でいたからLOUD PARKは滅んだし、ワールドツアーから日本を外す洋楽ロックバンドが増えた。
2019年には日本でDOWNLOAD FESTIVALが開催されるようになったが、ラインナップにSUM 41や MAN WITH A MISSIONがいることに「メタルじゃないの入れるな!」といった批判が多かったが、こういった点もいかに日本が世界の流れについていけていないかを物語っている。ダウンロードフェスなんてラウドミュージック全般フェスの代表格なわけで2019年にもなってそれを理解していない日本人が多いのは日本がこの手の音楽を楽しむ環境がちゃんと整っていない証拠である。だから世界各国で行われているダウンロードフェスは日本版が群を抜いて規模が小さいのだろう。


◆概念そのものの変化への対応の遅れ

ネット社会化が進んだことにより、2010年代にはスマートフォンでなんでもやる時代となった。それで「CDで音楽を聴く」「雑誌で情報を仕入れる」などといったそれまで当たり前のようになっていた概念そのものが崩壊する。

日本におけるハードロック/ヘヴィメタルの媒体の最大の権威といえばBURRN!誌であるわけだが、この雑誌及びその愛読者の行いからも“失敗”が窺える。
BURRN! (バーン) 2021年 1月号
シンコーミュージック
2020-12-04

まずこの雑誌の作り主達やそのメイン層の愛読者達なんかはメタルVSその他のロックでよく喧嘩してた世代(?)で、そういった人々の正義感、及びそれでもたらした風潮によって日本のメタルシーンが90年代型ヘヴィロックや国内メタルが受け入れられづらくなったりとかしたという話をよくされる。実に後先のことを考えない行動だと思う。
90年代の日本のハードロック/ヘヴィメタルのシーンといえばMR.BIGなどの“ビッグインジャパン”と称されしメロディックなハードロックとかが成功を収めていた。その手のバンドが売れているというのはそれはそれで良いことだが、そういうバンドで若い新たなファンをちゃんと取り込めていたかが甚だ疑問だ。その手のバンドのファン層は80年代から引き続きハードロック/ヘヴィメタルを聴いてる人ばかりだったはず。90年代にティーンエイジャーだった人がロックに憧れを抱くとすればNIRVANA、RAGE AGAINST THE MACHINE、X JAPAN、LUNA SEA辺りのバンドがきっかけとなるはず。そんな人々を取り込んで育てるような努力はしてなかっただろう。それどころか寧ろそういうロックが好きな人を敵視していたのではないか?
80年代スタイルを重んじるバンド、ビッグインジャパンのバンドが売れただけではそのとき限りの成功に終わる。目先の利益しか見ていない。それでは未来につなげることはできない。

そういう音楽面の話もそうだが、僕がもう一つ後先考えなかった大失敗として挙げたいのがネット社会に適応しようとしなかったということ。
BURRN!にはネット媒体もあるがこれを立ち上げたのが2018年と極めて遅い。それまでネットはTwitterをしていたぐらいという。こういうのはビジネスをやる者であらば2000年代から手を付けておかないといけないことだ。

この手の分野において日本最大の権威、環境を操作できるほどの力を持った者がこんなすこぶる仕事が遅いというのが手痛すぎた。日本のメタルシーンは若い層、新しい世代のファンが随分と少なく先細りしているわけだが、その原因は先代の者達の90年代以降のヘヴィロック、国内アーティストなどに排他的な姿勢、それに加えてこのネット社会への適応に大きく遅れたことが挙げられる。
平成終盤や令和に生きる世代なんてネット中心で雑誌を買って読むということをほとんどしない。どの分野においても世代間の違いに理解が無いのは致命的ミスとなる。
ビジネスは常日頃の行いやタイミングというのが重要。こんな遅すぎるタイミングで行動に出ても今更手遅れなのだ。

2000年代辺りにインターネットを軽視するか重要視するか、ここが運命の分かれ目だったのではないだろうか。上述の失敗例を振り返ってみても90年代からミュージシャンでありながらインターネットに目をつけるhideがいかに凄いセンスを持っていたかがわかる。

まあこうやって何が正しくて何が間違っていたのかを述べるのは後出しジャンケンの結果論で「終わってからなら誰でもなんとでも言える」ことだ。
僕が言いたいのはそんな過去の失敗例から学び、そしてhideの様な未来を見据えし賢い人間として生きねばということ。何事も一時の感情で決めたりではなく一手先、二手先を読む、そんな賢さが生きていく上で必要だ。



We love hide~The CLIPS~(期間限定盤)[2DVD]
hide
ユニバーサルミュージック
2020-11-04

君のいない世界~hideと過ごした2486日間の軌跡~
I.N.A.
ヤマハミュージックメディア
2020-04-28

We Love hide~The Best in The World~
hide
ユニバーサルJ
2009-04-29

X-JAPAN THE LAST LIVE 完全版 [DVD]
X-JAPAN
ジェネオン・ユニバーサル
2011-10-26