日本のヘヴィメタル系のコンサートと日本国外のヘヴィメタル系のコンサートは明らかに規模が違う。日本のは海外のと比べてウンと規模が小さくなりがち。
例えば色んな国で行われているDOWNLOAD FESTIVAL。日本版が群を抜いて規模が小さい。同じダウンロードフェスでも大きく違う。
download2019
どうしてこうも海外とで格差があるのだろうか?理由はやはり需要の差だ。日本は海外と比べてこの手の音楽のファン人口がずっと少ない。
日本で本場UKと同じ規模でDOWNLOAD FESTIVALをやれば予算に対して十分な数の客が集まらず大赤字間違いなしだろう。日本産メタルフェスのLOUD PARKが続けられなくなってしまったことからもわかることだ。

そして思う。どうして日本はメタル系のイベントはこうも需要が小さいのか、ファン人口が少ないのかと。その理由を考えてみた。


~初心者向けコンテンツが不足~

まず思うのがヘヴィメタルの入門、入り口があまりにも不足しているのではないか?
メタルのメディアやサイトは数多くあるがどれも基本的にマニア目線でメタルを既に熟知している人向けだったりする。

一般メディアに頼ろうにもその一般メディアがメタルに理解が無くて素人にメタルの魅力をちゃんと伝えられない。
時折一般メディアがヘヴィメタルを取り上げることがあるが大抵ただ派手でやかましいだけの「ヘビメタ」や色々と意味を取り違えた「デスメタル」といったステレオタイプのものを紹介しがちだ。そういうのを見てメタルの世界に足を踏み入れてみようと思い始める人はそうそういない。

元々ファン人口の少ないものであらば自分の知り合いにアドバイスをもらえる機会にも中々恵まれない。学校や職場にメタルを愛聴する人とは滅多にいないのだから。
そんなわけで素人がメタルを知るにはとにかくネットで手探りでするしかないのが基本である。

~新規ファンを取り込む機会を棒に振っている~

筆者はこれまでのことを振り返ってみて思う。そういえば古参メタルファン達は自分たちが気づかぬうちに新規ファンを取り込むチャンスを棒に振っていたのではないかと。
例えば2006年から2017年まで行われていた日本のメタルフェスLOUD PARK。フェスティバルは多くのアーティストが集結するので出演アーティストは新規ファンの開拓、客は新たなアーティストの発掘ができたりと市場を開拓するのにうってつけの場である。

そのLOUD PARK、従来のハードロック/ヘヴィメタル系のアーティストの他、アイドルやヴィジュアル系バンドといった余所者が出演することがあった。そしてその類いのアーティスト達に古参メタラー達は排他的な姿勢をとったりしていた。

↓2013年にBABYMETAL出演が発表された当時の人々の反応。こういう価値観がこの時代は正義とされていた。
当時は何も思わなかったのだが後になってみて思う。アイドルやV系を出すのはメタルをよく知らない層を取り込もうとする、新規顧客獲得のための取り組みだったのではないかと。
日本といえばアイドルやV系のファン人口が多い国だ。一方でメタルのファン人口は少ない。なのでファン人口が多い余所の界隈から客を取り込まないとイベントを開催する予算を回収して今後も開催を継続するだけの十分な収益を上げられないのではないかと筆者はにらんでいる。

しかし当時のメタラー達はそういうことが視野に入っておらず、ひたすらアイドルやV系を外敵扱いした。そしてそうこうしているうちにLOUD PARKはフェスの本来の役割であろう新規開拓ができず、客層は高齢化が進み、客数は減少し、2018年にとうとう開催を見送ってしまった。

もしもここでメタルファン達が排他的にならずアイドルだろうとV系だろうとヘヴィな要素を持つ者は皆仲間扱いしていれば、ドルオタやバンギャにメタルの魅力を伝えるような努力をしていれば新規メタルファン開拓に成功してLOUD PARKもあんな形で終わらずに済んだのではないだろうか?


又、日常会話の中にも新規ファンを取り込む機会を棒に振っているように思うケースがある。
よく目にするやり取り
A「自分もメタル聴いてるよ」
B「どのバンド好きなの?」

A「○○○(邦楽のラウドなバンド)とか」
B「・・・(ああこいつダメだわ)」

うるさく激しい音楽でもヘヴィメタル扱いされないといった素人には理解し難いマニアにならなければわからないことがヘヴィメタルには多々ある。ヘヴィメタルは極めて複雑な音楽で理解するまでにかなりの時間を要する。

そして上述のように一般メディアはメタルの魅力を伝えるのが下手なのでメタルをちゃんと理解していない人が多数いるためメタルの話をしようにもこういった展開になることが多々ある。そうしてメタルのマニアの人はメタルの話をやめてしまう。酷い人だと「ニワカのくせにメタルを語るな!」とマウントをとろうとさえする。

そこで筆者は気づいた。ここでメタルとはなんたるか初心者にもわかりやすく教えてあげる努力が必要なのではないかと。
こういう会話でいつも「コイツはニワカだからダメだわ」と止まってしまって相手もメタルを理解しないままで終わってしまうからメタルのファン人口が増えないままなのではなかろうか?「誰だって最初はわかってなくて当たり前」だと割り切る必要があるだろうと。
誰かがこのままではいけないと気づいてこの悪循環を止める行動を起こさねばいつまで経っても進展が無いままなのではないだろうか?
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ヘヴィメタルは元々アンダーグラウンドでマニアックな音楽である。なので一般大衆を遮断してしまうのも自然なことではあるのだが流石に村社会になりすぎてしまったようにも思う。昔とずっと同じ正義感のままでいるとモラルが原因でメタルシーンが完全に滅んでしまうであろう。
というわけで筆者もメタルシーンがいつまでも元気でいられるよう常に価値観をアップデートし続け自分にできる努力を惜しまない。

いつの日かコロナウイルス問題が収束してライブが再開されたとき、LOUD PARKができなくなったあの頃が嘘のような光景が見られるようにしたい。まずは2021年1月に振替開催予定のKNOTFEST JAPANが無事開催されたとき日頃の努力の成果を示してくれるはず。


ヘヴィメタル (字幕版)
ハロルド・ライミス
2013-11-26