世の中は複雑で正しいことがコロコロ変わったりする。だから当たり前のようにやっていることも常に疑問視する必要がある。

日本でヘヴィメタルのファンを長年やっているとどこか引っかかることがある。日本特有の謎めいた風潮があるのだ。
日本のメタルファンはさも当然のようにしているがよ~く考えてみるとおかしいと感じることを書き綴る。

~何故か外タレ至上主義~

筆者は過去にも記事に書いてきたが日本人のメタルファンはついつい洋楽の話になりがち。そして邦楽を低く見る人が多かったりした。(特に昔は。これを書いてる現在は昔に比べるとだいぶ減った。)
メタルに限らず他のジャンルでも洋楽と邦楽でファン層や評価が分断されがちであったがメタルファンが特にその傾向が強かった。

特にそれがよく表れるのが海外輸入のフェス。日本開催のOZZFEST、KNOTFEST、VANS WARPED TOUR JAPANがそうだった。この手のフェスは毎度「日本人いらない。もっと洋楽アーティスト呼んで。」といったブーイングが飛び交うのが定例であった。

今でこそこの手のラインナップに慣れていて今更どうこう言われることはあまりないが2013年に日本で初めてOZZFESTを行ったときの邦楽の多さに対するブーイングは凄まじかった。
ozzfestjapan2013
これは日本のメタルフェスといえば外タレが大半を占めるLOUD PARKのイメージが強かったからであろう。そもそも基をたどればLOUD PARKというのが外タレのための夏フェスSUMMER SONICの派生であるので、そこに昔からの日本人メタラーは外タレ至上主義の風潮が合わさるとこのような現象が起きてしまうのだと考えられる。

そんなわけで外タレこそ正義、邦楽は邪道といった価値観がごく当たり前のものとなっていた。
だがしかし時代が進むにつれてその価値観に違和感が生じるようになっていく。

~世界の音楽が好きなのに世界目線になれない矛盾~

日本人は外タレばかり好きで自国のアーティストに排他的になりがちといった風潮があると書き綴ったのだがここで大きく引っかかることが生じる。

その日本国外の人々が日本のアーティストを高く評価していたりするのだ。
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よく日本のメタルファンはマキシマム ザ ホルモン、そしてDIR EN GREYなどのヴィジュアル系に俗するバンドをメタルの蚊帳の外扱いするが、日本国外の人々はホルモンやV系をジャパニーズメタルとして評価している。海外メディアではそれらのアーティストを日本のメタルバンドとして紹介したりしている。

2012年に放送された世界番付でのヘヴィメタル特集では世界で最もメタルが栄えている国、フィンランドに取材に行き、あれこれフィンランドのメタル事情を取り上げていたが、その中でインタビューを受けたフィンランド人がホルモン、ディル、D'espairsRayをお気に入りの日本のメタルバンドだと公言していた。世界一のメタル先進国の人がそういう目で見ているわけである。
又、筆者が特に目にかかったのがこのTRIVIUMのインタビュー。

バンドのフロントマンのマシュー・キイチ・ヒーフィーが日本のメタルシーンをベタ褒め、中でも特に気に入っているのがホルモンだと言っている。世界的メタルバンドの人がホルモンを日本のメタルとして高く評価しているわけである。
他にもTRIVIUMはディルやBABYMETALといったLOUD PARKでぶっ叩かれた2組も気に入っていたりする。


こういった事例はいくつも目にする。日本人メタルファンがよく排他的になりがちなアーティストほど世界的にはメタルバンドとして評価されているという現実。世界目線だとホルモンもV系も立派なジャパニーズメタルであるわけだ。

日本人メタルファンは洋楽という世界の音楽を好む。それなのに世界目線になれずホルモンやV系を蚊帳の外にする。よく考えてみると凄くおかしなことになっているのである。

日本人は海外に憧れ、海外の人は日本のものを好む。これは恐らく無い物ねだり、隣の芝生は青いといった心理でこうなっているのではないだろうか?

かつて日本開催のOZZFESTやKNOTFESTで観客達は当然のように日本人出演者をよく叩いていたが、後になって振り返ってみるといかに日本人は意味不明な風潮に囚われていたかがわかる。日本開催のフェスなのだから日本人アーティストが多くなるのも自然なこと。アメリカのこの手のフェスなんかも自国のアーティストが大半を占めていたりする。
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日本のメタルシーンは他国と比べて弱いと思われがちだが日本人メタルファンが蚊帳の外にしてばかりのホルモン、V系、BABYMETALを普通にジャパニーズメタルの一員として受け入れたら良いのではないか?そうすれば日本もメタルが充実した国ということになる。

何度も言うがこれらの人達は世界的にもメタルバンドとして評価されている。そういうアーティストが気に入るか否かは勿論別問題だが、何事も色んな人の目線での価値観を理解することは生きていく上でとても重要なことというのだけは間違いない。

2014年、日本初開催のKNOTFESTでは邦楽出演者が何組も自分たちがアウェイであることを自虐していたのを覚えている。終わった後だから言えることだろうが今振り返ってみると音楽的にアウェイな出演者はいなかったと筆者は思う。
2021年1月に開催を予定しているKNOTFESTではそういったボーダーがなくなって全ての出演者が違和感がないようになっていればいいなと思っている。


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